凹円寺

引越に関わるあれこれを片付け中。
西島大介凹村戦争」を購入して爆睡中、同居人が何やら書いていた。

凹円寺               written by ねじまき 

僕たちが住んでいる部屋
僕たちは1Kの部屋に住んでいて、いつも一緒なわけだけれど、それでも機嫌の良い時は仲良くしているけれど、どちらかが機嫌が悪くなったらチョー最悪なわけで、逃げ場のない空気にどよんど。

でも、どちらかが少しだけ前向きにごめんねとか大丈夫だよとか根拠の全くない(それは本当に全くない)言葉で隙間を埋めれば、それはそれでなんとかなって「赤色エレジー」なんて言葉。

隣はクリーニング屋さんで家族経営、お店に入ると水商売の女が飼っているような僕の好きじゃないタイプの犬がキャンキャン。

台所に行けば腐ったバナナが白い黴を吹いていて、なんだか耳かきのぽやぽやみたいだなあと思いながらつかむとニュルリと手の中で滑り、それが重くて、ああ空気と化合しバナナが宇宙に還る、なんとゆーモノリス

玄関を開ければ目の前のアパートの二階からはいつもオペラとか60年代のカントリーソングとか化石になりすぎて岩と区別がつかなくなって多分もう砂になってしまった1/8mmの細かい粒子が漂っていてそれはとてもとてもうるさい。
ジョン・ケージとまではいかないまでも、せめてせめてもう少し一般性のある曲。

その通りの真ん中で氷結strongをあけてぐびぐび。

全くもってカッコ悪い。
ここにはシビレルほどカッコいいものがない。
ヴィンテージワインとか官能的な魚介類とかクリスタルの時計とか混ざり物の少ないヘロインとか思わずWOW!なんて言ってしまい欲望が刺激されて快適快楽怪光的な深海に棲むアロワナみたいな重厚なカッコいいのもがない。

でもこの街が嫌いじゃない。
駅前で歌うロッカーや長袖を着たようにタトゥーをいれた女性やスカートばかり短くてブサイクな女子高生や居酒屋でナガブチツヨシを歌っているバカどもが僕はとてもとても大嫌いだけれど、この街にはとてもとても沢山の孤独があって僕はその孤独が好きなんだと思う。

僕たちはもう少しでこの部屋をでる。
新しい部屋はバス・トイレが別で二部屋あって日当たりのよい部屋。
遠くで中央線の音がコトンコトンと聞こえる部屋。


僕はまだ凹円寺にいる。