少年老いやすく学なりがたし

少年老いやすく学なりがたし

井上靖の「しろばんば」に出て来た一節。

小学校の国語の教科書に載っていた作品。

主人公の少年が好意を寄せる女の子が書いた書き初めの文面に記されていた。
どんと祭り。


教科書に載っていたものは抜粋だったので、その続きが知りたくて父にせがんだ。

初めて手にする文庫本の小説だったように思う。
ルビの振ってあるものや挿絵の綺麗な児童文学を愛読していた小学生女子にとって、大人の世界を垣間みる一歩目だった。(とはいえ、書架から性描写を含むフランスの民話集や野坂昭如なんぞも盗み読みしていたのだが。)

本屋から帰って来た父に手渡された渋すぎる表紙と小さな文字、頁の分厚さに驚きながらも、夢中になって読んだ。



しろばんば」の正体が知りたくて、図鑑で調べたっけな。
通学路の山道に、夕刻になると現れる綿毛を持った浮遊する小さな虫がソレ(雪虫)だと考え、空中から帽子に掬っては集めた。


なんとなくそんな記憶の糸を辿る仕事帰り。

今まで蓄積した雑学、遠回りに思える履歴と職歴、些事ではあるが沢山の事象を思い返す。

一つとして、無駄な経験はないのだな。

しろばんば (新潮文庫)

しろばんば (新潮文庫)