忘れられない風景

深夜
どしゃぶりの雨の中
車道沿いで
スーツを着たサラリーマンがひとり
煌々とした自販機の白色蛍光灯の元
ディスプレイに向かってグーで殴ってた。

これでもか、というくらい
アクリル板がへこむくらい
本気でファイティングしてた。

彼は何に怒っていたんだろう。

もはやわたしに知る術もないが

明け方には濡れて重くなった衣服と
痣だらけの(或は血まみれの)拳と
どうしようもない空しさばかりが襲って来るんだろうなあ、と思うと

少し可哀想になった。