おたまじゃくしが降って来る
六本木の駅を出た瞬間に磯の香り。
鼻孔に付着するその粒子は潮騒。
おたまじゃくしの降りそうな天気。
ぷちぷちぷち。
足元にこぼれ落ちたそれをヒールで潰しながら歩く。
記憶。
交差。
黄砂。
サドルにうっすら付着した黄色いそれを手で振り払って登校していた。
大陸から流れる風は空を萌黄に染めていた。
短い夏の昼。
川の中に足を浸け
ぼんやりと水面を眺めていた。
金色の水面、深い深い緑、冷たい水流。
水面から頭をにょっきり出した蛇が
優雅に横断していったっけ。
おさかなはおさかなの世界に。
とりはとりの世界に。
こけはこけの世界に。
おほしさまはおほしさまの世界に。
わたしはわたしの世界に。
みんなみんな生きている。
あらあら
金子みすゞだわ。