絵を描いていない。
イラストじゃなくて、
絵の具を使った方の絵。

帰省の用意をしながらふと思ったんだけど
東京で一人暮らしをする女の子は
絵の具を使った絵には向かないのかなあ、なんて。

どう転んでもわたしが育ったのは山と川の中で
18歳までに観た景色、人間、くらし。

嵐、停電の夜、ロウソクをつけて入った五右衛門風呂。
雨蛙が横断する山道をランドセルで登下校したこと。
スミレ。ネムノハナ。
雪の日に見上げた山の白さ。
カワセミ。シラサギ。フクロウの声。
キジ。タヌキ。ヌートリア。イタチ。
国道で轢かれてたキツネの死骸。

夜半、親の運転する車が猫を轢いてしまって、泣きながら車を現場に帰してもらったこと。
件の場所に帰ったら何もなかったこと。

どこかを打って、そのまま逃げたのかな。
無事でありますように。

田舎には田舎の哀しみがある。

変えようがない。

今でも近くに緑がないと落ち着かない。
背の高い木。
できれば、ひとけのない森のような場所。
神社の中。

田舎にいると色彩が眩しいくらい眩しくて
静かな夜の静かさがうるさいくらいうるさくて

猫と暮らして来たから猫と暮らしたいし
猫と一緒に眠りたいけれど
悲しいかなこのアパートじゃあ飼えなくて
毎晩のように野良猫をナンパしている。

「おじょうさん、綺麗ですね。
 調子はいかがですか?
 ではまた逢いましょうね。」


衣食住が別になった環境とアトリエのようなものがあればなあ。

都心に住まいを構えていると、そういうことが難しくて
まだうまくバランスが掴めない。

ずいぶん慣れたつもりだけれど、生きてたら嬉しいこと、悲しいこと
いっぱいあって

初心を忘れるべからず、と心に釘を刺す。

自動改札機が怖かったこととかさw


わたしはこの先、どうやって生活してゆこうかな。

近い未来の仕事はわかっている。
不安がないことはないけれど、とても恵まれている。


「時間がない」って口癖みたいに言うようになったら

時間の流れるスピードの違う場所に行かなきゃ。

絵の具とスケッチブックとカメラ。