溶ける氷にレモンシロップが染みている。

首からあごにかけてのライン。
横顔。
染まる色はいつかの盆に着せてもらった女児用浴衣のヘコ帯。
かき氷のシロップみたいな、ジャンクで甘ったるいピンクとイエローのグラデーション。
添加物テンコ盛りが不思議に懐かしい、昭和の色。
絞りが入ってフワフワしてる。

シックな紺色浴衣のおねえさんに憧れる。
かっちりした帯の後ろに、バリッとカッコイイ大きなリボンが付いている。大人の結び方。

屋台で買って貰った赤いウサギの風船は、一瞬手を離した隙に、闇夜に吸い込まれて行った。

ウサギさんとさよならした回数は、何回?

よく草を詰んでは金網の間から差し入れた、校舎裏のポップ。
大人の思い付きで建てた小屋に放り込んで、増えすぎて死んだ子供。
職員室に訴えに行ってから、涙が止まらなかった。
わたしはそのあとのホームルームも、ずっとひとりでしゃくりあげた。
悲しかったんじゃない、責任を持てない生命を野放しにする大人が許せなかったの。
無反応な同級生と、無力な子供の自分が辛かったの。

あの違和感、今なら共感してくれる人がいるとわかる。

世界を知らない子供は、いつも一人だった。

本当に孤独ということは、救いようがないくらい切なくて苦しい。


小学生の時に稼ぎ頭の父を亡くし、働けない母を家庭に抱え、自力で学校に行って生きてきた同年代の女の子の話を聞く。
身内の死は、感傷に浸る暇もないくらいに大変だ。
強くならないと生きられなかった。
早く大人にならないと生きられなかった。

そんな元子供たちに、甘えていいよ、たくさん遊んで、贅沢にお洒落していいよ、みんなお姫様だもん、って伝えたい。