海の向こうに

海の向こうにいる友が
子猫を拾ったと言っている。
見れば賢く愛らしい顔をした青い目で
これは仕方ないのだと
猫神様に選ばれた者の運命をそこに感じる。

7年前、シャム猫を飼い始めた。
アレルギーが多いけれどどうしても一緒に暮らしたくて
短毛種の猫、という括りで探しに探した。
その命の誕生を、産まれる前から待っていた。
男の子だったけれど、凛とした佇まいと活発な言動から
おそらく女性なら誰でも知っているであろう女性デザイナーの愛称を
ファーストネームにいただいた。

人生は真っ直ぐいかないもので、
紆余曲折の結果、かの猫は岡山の両親の元にいる。

「猫は、元気?」

電話越しに、毎回尋ねる台詞。

出来れば側にいたい。
雨の日も寒い日も一緒に毛布に包まりたい。

日本の住宅事情、法律、生活の余裕。
そういうものを逐一考えると、一人暮らしで猫と寝食を共にするのは難しい。

でも本当は知っている。

難しいんじゃなくて、覚悟が足りないだけ。
情が移るのを恐れているだけ。

いつか綿の国星のお母さんがチビ猫を拾い上げたあの気持ちが
わたしにも降ってきますように。