きつねつきの科学
きつねつきの科学―そのとき何が起こっている? (ブルーバックス)
- 作者: 高橋紳吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/09
- メディア: 新書
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夢中になって読みました。
精神医学から見たツキモノ(憑依)の正体を考察した本です。
1993年の刊行とあって、時代の風を感じる箇所もありましたが、近代〜現代日本の種々の「ツキモノ」を幅広く扱っています。
「ツキモノ患者」の詳しい症例も載っており、興味深い一冊です。
わたしが育ったのは山陰に近い中国山地の山奥で、人間の流動性が少なく閉鎖的な土地でした。
近所で遊んでいたのは「キツネ谷」、そして「観音山」等と、横溝正史の小説にでも出てきそうな地名ばかり。
実際に「おじいちゃんがキツネにつままれて山をさまよった」だとか「キツネ憑きの家があって、行方不明の子供の場所を当てる」だとか、急にいなくなった近所のおばあちゃんのことを「神隠しに逢ったんじゃないか?」なんて憶測まで出るのが普通な、そんな土地でした。
さて、こういった田舎の話を都会人に話すと、大抵「なんだかこわい」と怪訝な顔をされるというのはよくあること。
科学と文明が高度に発達した社会では、古い風俗、習慣が根拠の無い因習だとされることが多いです。
でもね、都会のビルの隅にもキツネのいる神社があるじゃない。
あれはどう説明するのかな?
子供の間で流行ったコックリさん、分裂病患者#の呈する「盗聴器や宇宙人などによる監視、妨害工作」
(#この言葉も今は言葉狩りに遭いますが、本文の意を損なわないよう、忠実に書きます。)
夜になると路上に机を広げる、都会の占い師たち。
新興宗教。立派な学歴をお持ちの方でもはまってしまうカルト。セミナー。
どう説明するのでしょう?
この本は、人間はなにかに「憑かれる」生き物だということを、確信した一冊。
最終的には外国との比較文化から「ツキモノ」を通じた日本人論までに発展します。
一部抜粋します。
不幸が起きたとき人はなぜそういうことが起こったのか不安になる。(中略)現代において広義のシャーマニズムが根強く残っている理由は、不幸の説明体系を人々が欲しているからである。
わたしのように芸術なんぞをやっていると、急に物書きの血が降りて来たりイマジネーションが溢れて溢れて絵を描かないとどうしようもなくなる、いわばトランス状態になることがあるのですが
そのあたりのことにも触れていましたね。
トランス、変性意識。
人間の意識や脳は、まだまだ奥が深いね。