フィンランド・森の精霊と旅をする (Tree People)

フィンランド・森の精霊と旅をする - Tree People (トゥリー・ピープル) -

フィンランド・森の精霊と旅をする - Tree People (トゥリー・ピープル) -

今回は、縁あって手元に届いた、このどこまでも美しい本をご紹介いたします。
地図あり。 小さなカバンに入れて持ち運ぶことができます。

夏には手元にあったのに、バタバタとして紹介が遅れてしまいました。


ご存知ですか?長編ドキュメンタリー映画ひめゆり」。
この作品を知ったのは、歌手Coccoからでした。
次の世代に渡して、紡いでゆきたい映画が一本あるとすれば、わたしは間違いなくこれを選びます。

監督の柴田昌平さんの作品は、偶然に他で目にしたことがあります。

NHKスペシャル「世界里山紀行・フィンランド・森・妖精との対話」(独・World Media Festival銀賞受賞)

これ、本当に、とてもおもしろかったんです。
夢中で魅入った。

それから、直感で「この世界観のわかる人と知り合いたい」
そう思いました。
この制作者の実直さと感性は、合うんじゃないかな、と。
おこがましいけれど、わたしに。
わたしの周りの、わたしの好きなひとたちに。

この作品の原点には、一冊の写真集がありました。

この夏、独自に自身の映像会社から初出版物を刊行するというお話を耳にし、まだ取次店もなかったので、事務所(プロダクション・エイシア)から取り寄せました。
今ではこのブログで紹介しているように、amazonのカートでポチっとすることもできます。
是非、近所の図書館などにも置いてください。

http://www.asia-documentary.com/works/satoyama-finland.html



わたしが本書で特に印象に残ったのは、「カルシッコ」と呼ばれる木に刻まれたしるし。
年号、十字架、イニシャル。
死者の思い出を刻む風習。
文字を刻まれた木はそれでも生きるから、徐々に木の生命力〜樹皮に覆われて自然の中に還ってゆくようです。

わたしは小さな頃から「墓は要らない」「葬式も要らない」と言って来ました。
父もまたそう言いました。「骨は畑に蒔いてくれ、栄養になるから」と。
姉は「骨を外海に撒いてください、流れるから」と書き残してこの世を去りました。

死後のことはわからない。
けれど遺された身として、故人の願いを少しでもかなえてあげたいと思うのが心情。
姉には申し訳ないけれど、知らないピカピカの墓石の下に、彼女の骨がある。
どこかのお坊さんがつけた戒名で、仰々しく名前が彫られている。
菊じゃなく、用途不明な仏具でなく、
野に咲く花を、彼女の愛した花を、コットンレースを、シルクのハンカチを、アップルパイを
あげたい、ってそう思う。
お水じゃなくてレピシエハーブティーをさ。
線香じゃなくてアロマオイルやゲランの香水をね。
どこまでも美しいものが好きだった彼女に、いつまでも捧げたい。

わたしもね、わたしだけの木が欲しい。
山の子だけど、山の奥深くに入った事はない。
自然畏敬。
度を超した振る舞いをすると、怒りに触れて
命に関わることを知っているから。

いつか、わたしだけの木がみつかったら、いろんなことを告白しに行こうと思う。
そして、その木の下で絵を描き、森の声を、命の声を聴こう。


熊と少女の結婚によって産まれた森と暮らす民族に
敬意を表します。