色付きリップ☆その後

放置してたパッケージから、父に色付きリップのことがバレてしまった。

「すまん。」と、実に申し訳なさそうに謝られた。

思わず苦笑い。

そう、買って来たのは父。


これが20年前の出来事で、わたしが少ないお小遣いで買ったものだったら、親には大目玉をくらっていたところだった。

躾の厳しい我が家では、華美な装飾品はもちろん、友達のうちへお泊まりすることもそこでおやつを貰うことも禁止されていた。

近所のおうちで遊んだ際にクロレラを貰った日、わたしの舌は緑色になった。
帰宅して、子供の舌の色の異変に気づいた親は、わたしを問い正した。
「サインペンでも舐めたのか、色付き添加物まみれのお菓子でも食べたのか」、と。
どんな回答をしようと叱られることがわかっていたから、わたしは口を割らなかった。
その後、我が親は、件の家にクレームを付けに行ったらしい。
以後、そのおうちでおやつ時間になると、そのおうちのおばあちゃんに「まくずちゃんにお菓子をあげたら、まくずちゃんのお父さんに叱られるからあげられんのよ」と悲しいことを言われた。

子供心に傷ついたのを覚えている。


いま、わたしの唇はたらこ状にケミカルなピンク色で染められている。
おしゃれを通り越して、新しい呪術の化粧のようである。

人前にまともに出るには、コンシーラー等で顔面加工をしないとぎょっとされるであろう。もしくはマスク装着か。


初体験色付きリップは、甘酸っぱいを通り越して、ほの悲しい老親の謝罪で締めくくられた。