愛とか死とか読書とか。
例年になく肌が荒れて、痒さと痛さで発狂しそうである。
鏡の中の自分の顔は、痛んだプラムの果実のようなテクスチャーになっている。
思春期にも顔面のアトピーで苦しんだけれど、三十路過ぎると毎朝学校に行かなくていいから気が楽だ。こころない、というよりも無邪気で思慮のない子供の同級生の言葉にいちいち傷つかなくてもいい、集合写真は拒否すればいい。
アラーキーのムックを購入。チロの写真、いいなあ。亡くなる前後のチロ。
「やはり死というのは悲しいものである」、って書いてあって、当たり前のことなのに頷く。こんな簡単なことなのに、感じられないって、噛み締められないって、なんなんだ。
「死は悲しい」という、それだけのことを、当たり前に享受できたら、どんなにいい生き方か。
愛とか死とかエロスとか、表層だけを生きてると深淵を覗き込めなかったりするけれど、ふと触れた瞬間に、こうやって、呼吸をすることを思い出す。
細胞がざわめく。
遺体とか死体とかいうものを写した写真について。
愛や敬意があるもの、それを感じられるもの、は、狂おしく愛おしい。
戦争写真や報道写真でも遺体を見るんだけど、まったく別物に感じる。
堕胎され外界に出された胎児の写真。エコーに映った生きている胎児の写真。
何もかもが発達途中で、でも確実に生き物の形をしている。生き物になる途中。
砲弾を受け、あるいは事故で、肉片になってしまった、さっきまで人間だったモノ。
舞踏家の白塗りは、骨の白色だという。
妊娠してしまった猫の子を病院で、、そんなこともあった。
豆粒くらいの、子だったそうだ。
生んでしまっても、育てられないから。
誰に謝ればいいんだろう。
魂は、いつどこに宿るんだろう。
そしていつ離れてゆくのだろう。
空の色も花の色も、いつだって寂しいし悲しいし美しい。
丸まった猫の下腹部に手を入れる。整った毛並みにまみれ、じっとりと湿った温かさを感じる。
好きな感触。
世の中の美しいことを知っている、という事実をひとつずつ確かめる。
チョコレートのかけらを舌の奥で溶かす。
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「看取る」は「見撮る」だったのか。なるほど。