脈絡なく、夢十夜。

第一夜

こんな夢を見た。
小学校の遠足で、ロッククライミング。団体で岩を登るチビッコの中にわたし。
頂点に辿り着けるものは少ない。
ヤジロベエみたいな恰好で頂きに組み体操。形は、「松」。腕が痺れる。

第二夜

こんな夢を見た。
イヌイットの女の子と文通をする。
紅く染まった頬で駆けて来るあの娘。
人工塗料の桃色に染まったチュールを身につけ、北京オリンピックフィギュアスケートに出るのだ、と笑う。
暑中見舞いに書かれた言語は、日本語の「てにをは」。

第三夜

こんな夢を見た。
米子の同業クリエイターと人生うまく行かず、国外逃亡を試みる。
農協で買ったは日本地図、少しの駄菓子。
職質を避けつつ巡回する街は、いつも夢で出逢うわたしの頭の中の街。
地図はあれども、名前はまだない。
最近治安が悪いので、駐在所が出来たみたい。

第四夜

こんな夢を見た。
目覚めたらもうどこにもない20年前の記憶。
「早くお風呂に入っておいで。夕食はポテトサラダだから手伝いなさい」
ホンモノの火を扱う機会もないだろうからとのヒッピー両親のハカライで設置された五右衛門風呂から
お湯を桶に掬っては汗を流す。
草いきれのような人いきれのような、風呂上がりの髪から立ち上るムンとした熱気をタオルで覆い、台所に向かう。
もうどこにもない団欒、のような風景。
家庭菜園で採れたサヤエンドウと、マッシュポテト。
うちのサラダは乾燥レーズンと缶詰のミカンを入れるんだっけ。
夕飯を促す猫の姿は網戸越しに見える。
日没の早いその土地は、午後3時には視界が紫とオレンジの墨流し


愛していたし 愛されていたし 愛したかったんだな、と気付いて
わんわんと泣いた。


昨年看取った三毛猫のことを考えた。



十に満たない夜の、十に満たないお話。


ゴーヤのカーテンで暑さをしのいだ、実家の部屋2007。