朱 紅 

曇天の中起床、庭の草木を見て視線を遠くにやる。
ミニバラが珍しく満開である。土があったのか。
うちのバラの赤は、絵の具の「ROSE」そのもの。
眼に鮮やかすぎるまぶしいピンクが混じっており、手折るのが勿体ない。
花弁は、細工のような造形をしていた。

日本語の「赤」は「RED」と訳すけれど、根底にあるのは朱色なんじゃないかなあと思ったりする。
朱には黄色味が混じっている。
思い起こすは神社の鳥居。そして朱肉。

「紅」の本物に逢うことは少ないが、こちらは小指を少し舐めて唇にひくとなんとも言えぬ発色がある。
着物を着るようになってから、たまに紅を差すが、その重厚な色彩に酔うことがある。
だから、一等大切な場面のときにだけ、そっと唇を染める。

小さな有田焼のお猪口の中を覗くと、玉虫色。
我が家で昔、母が使っていたものと同じ、小町紅
昔はもっと単価が安かったように思うんだけど。
卸しで売って頂いていたからなのかしら。