戦場のへびいちご新聞〜Strawberry Fields Forever

戦場のイチゴ狩り
http://mainichi.jp/select/world/corres/news/20090709mog00m030033000c.html?inb=tw

特派員すけっち:思い出す「戦場のイチゴ狩り」----甘い甘いガザ名物


ガザ産のイチゴをふんだんに使ったイチゴジュース=ガザ市で2009年7月5日

 パレスチナ自治区ガザ地区を訪れた時、決まって飲むものがある。地元特産のイチゴをふんだんに使ったイチゴジュースだ。たっぷりの甘みに、ストローを吸っても果肉がいっぱいで吸い上がらないほどの充実ぶり。「日本の有名フルーツ店で同じものを注文したら、いくらぐらいするだろう」などと思いながら舌鼓を打つ貧乏性の自分が、ちょっと悲しい……。

 先のイスラエル軍によるガザ攻撃の「停戦」から5日目の1月22日。私はガザ北部のイチゴ畑にいた。朝一番にガザ市のホテルを出て、攻撃現場を取材しながら北上。忙しくて食事のことなど忘れていたが、夕方近くになって急に空腹感に襲われた。それを見透かしたかのように、同行した現地のパレスチナ人助手が「近くに知人のイチゴ畑がある」と連れて行ったのだ。

 周辺一帯はイスラエル軍の戦車に踏み荒らされていたが、イチゴ畑は奇跡的に無事だった。助手の知人が「攻撃中は世話できなかったから、味の保証はできないけど、好きなだけ食べていって」と出迎えてくれた。


初出荷を間近に控えて精を出すイチゴ農家の人々。この約1カ月半後にイスラエル軍のガザ攻撃は始まった=ガザ北部ベイトラヒヤで2008年11月3日、前田英司撮影
 試しに一つ実をちぎり取って、口に放り込んでみた。十分に甘い。「イチゴは好きか?」と聞かれ、「ガザ産は特においしいね」と答えると、傷んでいないイチゴをえりすぐって、両手いっぱいに採ってくれた。おかげで空腹は一気に解消され、逆に満腹になりすぎて困ってしまうほどだった。

 「停戦」から早くも半年。先日、その節目の取材のためガザに入り、またイチゴジュースを注文した。そして、攻撃のツメ跡を見ながらの「イチゴ食べ放題」という、あの不思議な体験をふと思い出した。【ガザ市(パレスチナ自治区)で前田英司】

2009年7月9日

Strawberry Fields Forever