ゆめをみた

「じゅんちゃんのヘッドフォンと交換してよ」って幼なじみの妹のみいちゃんがやってきて差し出したのは、
彼女が子供の頃にいつも片手に掴んでいた紫とオレンジとピンクのまじったようなミルクのにおいのするぬいぐるみのファー(そいつはアライグマかモモンガか、耳のある不思議な生き物の形をしていた)で覆われた
お菓子のおまけの簡易ヘッドフォン。

音漏れどころか、頭に装着するものだとも思えないちゃちな作りで、それでも雑にあしらえないからちょっと困った顔をして手持ちのヘッドフォンやイヤフォンの中から探し当てたのは、小さな女の子が納得しそうな白いiPod用の小振りなインナーフォン。

みんなでお別れの集合写真をたくさん撮る。

なんでいつも泣きそうな顔をして遠くを見ているんだろう
小さなわたし。


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三毛ちゃんと同じ。

小学校から帰ったら4匹の子猫たちがいなくなっていて
やんちゃゆえ「プロレス」と名付けられた利発な白猫が残っているはずだったのに、なぜか気の弱い一人つまはじきの三毛猫三毛太がいた。

「とうさん、どうしたん?」

「保健所に連れて行こうとしたら、三毛太がこうやって首をかしげて悲しそうに見るんじゃ。その顔を見とったら、どうしても連れて行けんようになった。」


三毛ちゃんはこうして後の19年、わたしたちと生きることになった。

プロレス、わんぱく、ぼうけんか、へいみん、とそれぞれ子供によって名付けられた白い猫の代わりに、母猫チャム公がその10年後に憤死して、飼い主が引っ越して、新しい猫が来て、飼い主の家族たちも減ったり増えたりして
まったくもってすっかりおばあちゃん猫になるまで、
生を全うした。


いつも泣きそうな顔をして、首をかしげてこっちを見ていた。